専門用語、の難しさ

インターネット普及以前の、パソコンがようやく家庭に普及し始めた頃のことです。
初心者向けパソコン雑誌の編集部でこんな話を聞いたことがあります。
その雑誌では、「データベースソフトの活用法」をテーマに特集を組みました。蔵書管理など、いろいろな実例をあげてデータベースソフトの使い方を紹介したのですが、その中に、雑誌で見た料理や自分の得意料理などの情報を登録して自分だけの「レシピ集」を作るという項目もありました。
後日、高齢の男性からこんな投書があったというのです。
「小生、レシピなる専門用語は聞いたことがなく、パソコン辞典にも載っていない。解説してもらわねば困る。」
そのときはつい大笑いしてしまいましたが、同時に、大きな教訓となりました。
パソコン雑誌の記事が、純粋な技術や操作の解説だけでなく「生活の中でいかに使うか」を語るようになってきた時期です。私も一人の筆者としてパソコン用語に注意を払うのが習慣になっていましたが、「パソコンで何かをする」のがテーマの場合、その「<何か>」の用語にも注意が必要だということを学んだのです。(レシピの例は少々極端だとしても)
自分はパソコンには詳いと言えそうですが、「<何か>」の方に詳しいとは限りません。よそでよく聞くからと安易に使った言葉が実は専門用語で、説明しないと理解してもらえない可能性もあるわけです。
「検索のツボ」では毎週テーマを決めて検索のしかたを紹介していますが、そのテーマは毎回違う「<何か>」です。毎週テーマを考えるのは苦しくも楽しいことですが、検索語(キーワード)をはじめとして、文中の言葉選びには毎回悩まされています。