「たまにつながる」じゃなくて「たまにつながらない」レベル

 先日、イーモバイルの新規契約をして、EMONEαを導入した。EMONEαは、前機種EMONEの基本ソフトを最新のWindows Mobile6にしたもの。簡単に言えば、「高速データ通信専用のケータイ電話」に加入して、「ワンセグBluetoothに対応したデカいAdvanced W-ZERO3 es(アドエス)」を買ったことになる。
 最初はCFカードのアダプタを考えた。でも、今後使うマシンが変わったときにCFカードスロットがあるとは限らないし、EMONEαを外付けモデムとして使った方が使い回しが効くだろう。EMONEαにZEROProxyを乗せるとiPod touchをネット接続できるというのも背中を押した。ちょうど、PCWatchで山田祥平さんが書いている。

山田祥平のRe:config.sys■プロバイダがやっていいこと悪いこと

 文中にある、イーモバイルに「無線ルータ」を出して欲しい、というのは私も同感。というか、私のEMONEαの使い方が、すでにルータのようなものだ(高額だが)。そのため、EMONEαの機能には、実はそれほど興味がなかった。(とはいえ、実際使ってみると、OSと製造元(シャープ)が同じでも、アドエスとの差異がいろいろあって面白い。Operaのバージョンも違うし。)
 ルータは長時間接続されてしまって事業者的には大変という見方もある。しかし、もともとイーモバイルは連続通信6時間で一度強制切断される。それに「無線ルータ」が外出先で利用されることを考えると、ルータの内蔵バッテリーやUSB給電を行うPCなどといった「電源の持続時間」で接続可能時間が左右されやすい。インフラ的にはそれほど困らないのではないか。ルータに同時接続可能な端末数を事前にMACアドレスを登録した3〜5台くらいに制限すれば、確信犯的な「ただ乗り」も防げる。利用者像(私だ)を考えれば、同時接続1台のみというのはナンセンス(そもそも、ルータである必要性が薄くなる)。
 ところで、私はアドエスのユーザーだ。アドエスをPCにつなぐこともできる。ちなみに、ZEROProxyも、タイトルから分かるようにもともとW-ZERO3系で使うことを想定したソフト。それなのに、どうして同じように外につなぐEMONEαを買ったのかというと、以前から「ウィルコムアドエス)の回線速度の遅さが、外出時のPC(LIFEBOOK U)での作業時にストレスになっていて、回線を増やした方がましだという結論になったからだ。(ついでに自宅周辺がこの6月、イーモバイルのサービスエリアに入った)
 家庭でのブロードバンド接続が普及し、ケータイ向けコンテンツを別に用意するサイトが増えた影響もあると思うが、PC向けのサイトは最近モバイルのことをほとんど考慮していない。重い。横1024ドット表示の3分の1幅で動画広告を貼るニュースサイトとか、重いフラッシュでトップページを構築する直販サイトとか。それに、ファイルのダウンロードなどもする。
 アドエスによるインターネット接続時の通信速度は、理論値256Kbps。実際はもっと遅い。イーモバイルの場合、理論値3.6Mbpsで、半月ほど使ってみたところだいたい1Mbpsオーバー(Bluetooth経由だと最大400Kbps前後)といったところだ。実際の速度は、使う場所(基地局からの距離や同一基地局を同時に利用しているユーザー数)などで変動するが、今のところ「ウィルコムよりイーモバイルが遅い」場所はない。サービス提供エリアを見る限り、「ウィルコムはつながるがイーモバイルはつながらない」場所は多いと思うが、今のところそういう場所に長期滞在する見込みは薄い。
 料金の影響もある。ウィルコムの料金プランは、アドエス単体での通信が安くあがる通話用の「定額プラン」をベースにしたサービスと、PCからの接続が安くあがる「データ通信系」のサービスとがある。どちらも定額プランがあるものの、前者はPCでの通信が、後者はアドエス単体での通信(メール受信や公式サイト利用など)が、それぞれ別会計となり、アドエスでもPCでも結構な時間通信をする私の使い方だと、どちらを選んでも結構高めについていた。(イーモバイル契約以前はPC用の「ネット25」を使っていた。25時間まで一定金額、というラインは超えていなかったが、別会計分が結構出ていた。)
 それなら、ウィルコムアドエスでの通信を前提とした「定額プラン」ベースに移行し、PCでの接続は少し高くついても速いものに変えてしまおうと考えたわけだ。
 結果的に、ウィルコム一本で7000円強/月かかっていたのが、ウィルコムイーモバイルで1万円前後となった。ちなみに、イーモバイルは最近始まったライトプラン(一定量まで安く、それを超えると上限金額まで従量課金)を選んでみたんだが、2日(2回の接続)で上限を超えた。定額プランに変更すれば1000円ほど安くなる。変更するつもりだ。

 公衆無線LANの網がもっと密に構築されているなら、こういうことを考えなくてよかった。たとえば、ちょっとした喫茶店ファミリーレストランならだいたい無線LANが使えるものだ、というような状況であれば。でも、実際はそこまで進んでないし、「使える」と言っている店でも、席によって電波の入りが悪くて接続が安定しないこともある(今いる喫茶店がまさにそう。場所は秘す)。インターネットへの依存度が高い現在、「たまにつながる」(つながる場所へわざわざ行けばつながる)レベルでは困る。せめて携帯電話レベルの「たまにつながらない」(つながらない場所もある)レベルでないと。さらに、つながるだけではダメで、できれば、「遅いADSL」くらいの速度は欲しい(高速だが高額というサービスも、もちろん歓迎する)。こうなると、現実解は、携帯電話系(イーモバイルも含む)サービスしかない。
 一方で、アドエスのような「スマートフォン」も性能が高くなって、いわゆる「高度なネットサービス」に依存しやすくなった。そうなると、端末はともかく回線速度が足りなくなりやすい。アドエスなどは、なまじ性能が高くてOperaのように「使える」ブラウザが乗っているだけに、回線の遅さを実感しやすくなってしまっている。現状の「他社がいろいろサービスを始めたので相対的に遅くなってしまったけど安い」というのはアリだし、ありがたいのだが。
 ウィルコムもそれは分かっているからこそ、次世代PHSサービスに向けて2.5GHz帯を利用する免許申請をしているんだけど、「今そこにある不足」は解決できないからなあ。

 「機能のネット依存」というのは、私の考えるBalanced Client*1の条件の一つなのだけれど、そのベースには「たまにつながらない」レベルのブロードバンド回線が必要だ。ただし、「常時接続」でなくてもいい。この点は、いわゆるシンクライアント(ThinClient)と大きく異なるし、モバイル環境下ではアドバンテージになる発想だと思っている。

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ところで。

  • EMONE(イーエムワン)が「イモ姉」と読めてしまって困っています。
  • 単純に荷物が増えてしまいました。