検索ボックス=web2.0時代のコマンドライン

2007/08/18、Vistaのデスクトップ検索機能について一部訂正。

「検索語」としてよみがえる「コマンド」(長い前置き)

MS-DOSの時代、パソコンに作業をさせようと思ったらキーボードでコマンド(本来は「命令」だが、実質的に「呪文」)を打ち込む必要があった。このコマンドを打ち込む部分が「コマンドライン」。今みたいに、メニューにずらりと「できること一覧」が並んで、そこからやりたいことを選んだりしない。
現在。ブラウザでのアドレス入力(正確にはURL入力だが)ではキーを打つ。コマンド入力に近い。打ち込んだ内容に従ってページが表示(=処理が実行)される。打ち間違えるとエラーしか出ない。この辺も似ている。
ブックマーク(あるいは「お気に入り」)に登録したり、他のページからリンクをたどったりする分には、メニューからの選択と大差なくなる。これらは、視点を変えれば「よく使うコマンドをメニューから選べるようにする」と言い直すこともできる。メニューのよいところは、正確な呪文を覚える必要がないこと、キー入力が苦手な人でも簡単に操作できることなどだけれど、呪文を覚えている人間は一覧から見つけるのがおっくうなことが多いし、キー入力も苦にならない人には苦にならない。
あ、メニューよりコマンド入力の方がいいと言いたいわけじゃない。単に、「こういう考え方をしたら面白いかな?」ということ。念のため。

マシンの都合に合わせたコマンドから、人の都合に合わせたコマンドへ

ウェブサイトを利用する起点として検索サイトを使う場合、当然ながら検索ボックスにキーワードを入れる。で、検索結果から「これは」、というものを選ぶ。
これもまた、コマンド入力なのではないか、と。
ちょっと違うのが、MS-DOSなどのコマンドはマシンサイドの事情で決められていたけれど、検索に使う語句は人間側の都合で好きにできると言うこと。ただし、「OR」とか、「title:〜」などのOperand(演算子)を使って、マシンサイド(検索サイト)の都合に合わせた検索も利用できる。
もうひとつ興味深いのが、検索結果が一覧になり、ユーザーがそこからひとつを選べること。つまりこれ、コマンド入力に従ってメニューが生成されるということだ。いわば、二段構え。何十億もあるウェブページから、いくつかの候補を出すというのは、何千もある機能からいくつかの項目を選んでメニューに出すというのちょっと似ている。
ネット経由でサービスが提供される時代、「やりたい作業」「使いたい機能」を入力すると検索結果として「それを実現できるサービス」がリストアップされるなら、いよいよもって、パソコンでソフトを起動するのと同じだ。そういう意味で、検索サイトの入力欄というのは、Web2.0時代のコマンドラインと呼んでもよいのではないかなと、思ったりもするわけだ。

ウェブ検索ほど頭がよくないVistaの検索ボックス

「人間の言葉をベースに検索を行って候補をピックアップ」→「一覧から選択」というのはWindows Vistaでも採用されている。スタートメニューの検索ボックスを使って、ソフト、コントロールパネル、ドキュメント、アクセス履歴などを呼び出す機能だ(同様の機能はVista以前にMac OS Xで実現されている)。
ウィンドウズの場合、ウィンドウズ95からはスタートメニューに登録済みのソフトを一覧から探して起動するのが作法なわけだが、ソフトが多くなるとメニューの項目数が膨大になるし、メニューの中にヘルプファイルやらアンインストール用ソフトやら、余計なものがたくさん登録されてしまって見つけにくい。それを改善すべくXPで採用されたのが、使用頻度の高いソフトをスタートメニューにリストアップするものだが、表示できる数には限りがある。
これがVistaになると、検索ボックスにソフトの名前を入れれば、その名を含むソフトがリストアップされる(同じ文字列を含むファイルやメール、ウェブサイトのアクセス履歴などもリストアップされる)。
意外にいい機能だと思うんだが、Vistaではユーザーに対する配慮が足りない。特に、英語圏以外のユーザーに対して。正確な表記で検索しないとソフトもコントロールパネルも見つからないからだ。
例えば、標準のメールソフトである「Windows メール」は、Windowsとメールの間にスペースを入れて区切らないと検索されない。2語続けて「Windowsメール」ではダメ画像管理ソフトの「フォトギャラリー」は正式な表記が「フォト(半角スペース)ギャラリー」で、「フォト」と「ギャラリー」を続けてしまうと見つからない(2007/08/18訂正)。エクセル、ワードは「Excel」と「Word」と英語表記でないとダメ。当然だが、「表計算」とか「ワープロ」じゃソフトは何も見つからない。
そうなる理由は簡単で、スタートメニューに登録されたソフト名や実行ファイル名、コントロールパネル上の表記などだけが検索対象としてインデックスに登録されているからだ。
まったくもって頭が悪い。もうちょっと表記に関して融通を利かすことはできないのか。「ひょっとしてコレ?」みたいな。ヤフーやGoogleなら、アルファベットとカタカナが続いていたら2語に分けて検索してくれるし、表記揺れに対する対策もなされている(さすがに英語表記と日本語表記のすりあわせまではやってないが)。
もともとVistaをまっとうに動かすにはそれなりのマシンパワーが必要なんだから、こういう部分で賢さを見せてほしいものだ。「Aeroってキレイだねー。・・・で?」という話になっちゃう。
簡単な改善法もある。せっかくVistaでファイルのメタタグで検索できるようになったのだから、ショートカットアイコンや実行ファイルのメタタグに「エクセル」などと入れておけばよいのだ。Vista対応のソフトの日本語化ってのは、そこまでやって本物だろう。「翻訳(トランスレーション)と日本語化(ローカライズ)は違う」というのが私の持論。ついでに言えば、「表計算」でエクセル、「ワープロ」でワードが検索されたっていいはずなんだけどね。もちろん、一太郎でもいいんだけど。まあ、一太郎は「一太郎」で検索すれば一発だから、検索ボックスに関してはWordより得をしている気がする。